皆様、いつも当コラムを拝読いただきまして、誠にありがとうございます。今回コラムを担当させて頂きます、ひかり薬局八万店でございます。
【はじめに】
今夏は例年と比べて気温が高くなることが予想されており、様々な身体の不調が待ち受けています。
特に、私たちの身体の表面を覆うように存在している”皮膚”は、太陽光に含まれる紫外線、感染症などの『外的要因』や精神的ストレス・栄養不足などの『内的要因』により、痛みや痒みなどトラブルの原因になりやすい器官です。
今回は、夏場に多い”皮膚トラブル”の種類と原因、対処法について、ご紹介させていただきます。
【皮膚の機能とは】
皮膚は、体重の約16%(表面積は畳1枚分程度)を占める人体最大の器官としても知られています。
主な機能としては、
- 体外の刺激から身体を守る(バリア機能)
- 体温を調節する
- 水分と電解質のバランスを維持する
- 触覚や痛覚、かゆみなどの刺激を感じとる
などがあり、私たちの身体の健康を保つ上でとても重要な役割を担っています。
【夏場に多い皮膚疾患の種類とその原因】
次に、夏場に多くみられる皮膚疾患について、少し見ていきましょう。
1: 伝染性膿痂疹 (とびひ)
子供に多い皮膚疾患で、細菌による感染症です。虫さされやあせも、擦り傷の部位をひっかいて、感染を起こすことが多く、痒みが非常に強いです。
早めに原因を特定し、抗生剤や痒み止めなどを用いて病変を広げないことが治療上大切です。
2: 手足口病
子供に多い皮膚疾患で、ウイルスによる感染症です。文字通り、手のひら、足の裏、口の中に発疹ができることが特徴で、発熱も付随して認められます。
地域によっては、警報レベルの流行が報告されていますので、しっかりと手洗いを行い感染を予防することが大切です。
3: 接触性皮膚炎
何らかの物質が皮膚に接触し、それが刺激やアレルギー反応となってかゆみを伴う湿疹や紅斑(皮膚が赤くなる)が出ます。
夏場は肌の露出が増えるため、金属アクセサリーなどの接触による金属アレルギーの発症しやすくなります。また、制汗剤、日焼け止めなどの化学物質の使用により薬剤アレルギーを発症する場合もあります。
さらに、夏期はイネ科植物由来の花粉が原因となる花粉皮膚炎を起こすケースもあり、早めに原因を特定して対処することが重要です。
【健康的な皮膚を保つには】
皮膚の健康は、
- 清潔な状態の維持
- 栄養素の補給
- 適切な生活環境
これらによって維持されています。すなわち、皮膚の健康をしっかりと維持することは、皮膚疾患にかかりにくい身体を作ることに繋がります。
1: 皮膚を清潔な状態で保ち、病原となる物質を除去する
皮膚は病原となる細菌やウイルス、化学物質などが付着しやすい環境下に晒されています。
シャワーや入浴は、汗によるベタつきを取り除くだけでなく、皮膚を清潔にすることが、感染症などを防ぐためにとても重要です。
また、夏場の皮膚は、冷房や紫外線による乾燥を受けやすく、「インナードライ肌」という皮膚の表面はベタベタしているが、内側は乾燥してカラカラという状態もこの時期に多く見られます。
お風呂上がりの清潔な肌には、「夏だから大丈夫」と考えず、保湿剤をきちんと塗ることが大切です。
2: 食事から摂れる栄養素が皮膚の状態に関係する
ビタミン群(ビタミンA、B6、C、E)は、皮膚や粘膜の健康維持、肌の酸化を抑制する等に役立つ栄養素です。
さらに重要な栄養素として、「亜鉛」が皮膚のターンオーバーを促進する重要な役割を演じています。
亜鉛は体内に約2~3gしか存在しませんが、発育や成長の促進、DNAやたんぱく質の合成、免疫力、味覚・嗅覚、生殖機能の維持などその機能は多岐にわたります。
近年では、低亜鉛血症(亜鉛が不足している状態)がもたらす様々な皮膚病変の報告例が増えてきています。
体内亜鉛が欠乏すると、①味覚障害、②食欲不振、③舌痛症、④皮膚の生成・維持の障害などが起こります。
亜鉛の吸収率は約30%と言われており、肉(赤身部分)、牡蠣、卵などの亜鉛を多く含む食品を適切に摂取することが重要です。
3: しっかりとした睡眠の確保、ストレスの少ない環境
睡眠が不足すると成長ホルモンによる皮膚のコラーゲン生成が抑制されてしまいます。
できるだけ、良質な睡眠を確保するとともに、ストレスの少ない生活を送ることを心がけましょう。
【おわりに】
”皮膚は全身を映し出す鏡”とも言われています。
すなわち、体内の健康状態が悪いと皮膚に異常が現れる場合があることを意味しています。
皮膚の健康は、一朝一夕では成り立たず、適切な生活習慣を身につけて、日々の生活を送ることがとても大切です。
ぜひ、この機会にご自身の生活習慣や食生活を見直してみて、体の内側から改善していき、健康的な皮膚を維持した状態で、今年の夏を乗り切っていきましょう。
この度は、ご拝読いただきありがとうございました。
執筆担当:ひかり薬局 八万店
参考資料:亜鉛欠乏症の診療指針 2018
参考資料:日本皮膚科学会ホームページ